メメント森

そのうち攻略情報とか書けたらいいな

ネトゲの世界の一期一会

1年間、こつこつ遊んできたゲームの同盟が解散した。

ゲーム自体はまだ続く。でも自分が遊ぶペースは劇的に落ちるだろうな、と人ごとのように思う。

 

PCゲームなので、コミュニケーションはdiscordがメイン。70人以上いる大所帯で、サーバ1位も何度か取った、それなりに強豪の一角だった。

 

同盟内の仲がよく、幹部陣の人柄もよく、1日中チャットが賑やかで、本当にいい同盟だった。たぶん別の同盟だったら、とっくに引退していただろうと思う。戦争専門の武闘派も、作戦行動メインの人も、チャット勢も、いわゆる農民も、みんな自由にマイペースで遊んでいたし、結果もついてきていた。他同盟からの移籍者も多く、うまくいく要素しかなかった。

 

それでも、解散する。

 

マンネリ感もあっただろうし、コロナ騒動も手伝って、みんなのリアル環境が変わっていった。サーバ中に恐れられた強豪のイン頻度が減り、大手の競合同盟がじわじわ衰退し、うちの同盟も静かにペースが落ちていった。チャットだけしているメンバーも増えたし、ゲームにはインしてチャットに参加しない人も増えた。さまざまな理由で、ゲームへのモチベーションがゆるやかに落ちていったんだと思う。

 

解散にいたるまでの小さな事件はいくつかあった。チャットメインのゲームには付き物なので、そこには触れない。人間が複数集まれば、衝突もあるし、趣味の相違もある。その機微を受け入れる人もいれば、そこだけは許せない一線を超える人もいる。その線を引く位置もみんな違う。だから少しずつ終わっていく。

 

それにしても、不思議な解散だな、とは思う。

決定的な理由はなかった。

 

メインの数人が引退し、その寂しさは当然あるにせよ、残ったメンバーはそれでもマイペースに楽しく遊んでいた。アクティブ勢が少しずつのんびりに移行していくなかで、シーズン終了の2週間くらい前だろうか、役職者の間で「今期で解散しようか」という声が出た。

 

同盟員からは、もったいない、という声もたくさんあがった。けれども、絶対的に拒否という声はあがらなかった。他同盟のフレンドや、もともとうちの同盟にいて別同盟に移籍した人の人脈などを通じて、毎日少しずつ、次シーズンの所属先が決まったという声が増えていく。決まってよかったね、と声をかけあいながらも、雑談ルームでは相変わらずのバカ話に花を咲かせていた。

 

この同盟が解散するなら、自分はここで幕を引きますと、引退する人も少なくない人数になった。たぶん、心のどこかで、引き際を考えながら日々を過ごしてたんだろうと思う。正直な気持ちとして、自分もそうだった。

 

ゲームに飽きたわけではない。でも、リアルタイムの戦争シミュレーションである以上、インしている時間が戦力とほぼ比例する。自分は幹部でもあったので、多忙になってイン頻度が落ちることに、ずっと抵抗感があった。数日インできなくなるたび、何度も引退を考えた。役職の辞退も申し出た(※役職報酬が大きいゲームなので)。それを通すと他の多忙な人も気まずいから、とたしなめられて、結局シーズン1から解散までズルズルと幹部に留まってしまった。

 

たぶん、自分がゆるやかに最前線から引きつつあったことも、解散につながった一つの要因なのかな、と感じている。自意識過剰かもしれないけれども。よくも悪くも、攻略勢でチャット勢だったので、インが薄くなれば悪目立ちするかなと感じていた。

 

世の中に協力や対人戦を楽しむゲームは数あれど、普通はその場限りでなにかしらの決着がつき、その積み重ねで人間関係が築かれていく。けれども、外部チャット(うちの場合はdiscord)を使っていると、普通のゲームとは次元の違う、濃密な人間関係が短期間で生まれていく。

 

最初は攻略トークだったり、作戦検討だったり、戦争になってからは実況だったり、いずれにせよゲームチャットとして機能していたものが、いつの間にか雑談が一番楽しくなる。24時間、いつルームを覗いても、誰かしらが楽しくチャットしていて、いつでも自分が輪に入れる。いつでも退室できる。こんなに楽しい場はなかなかない。操作が忙しいゲームでは成立しない、シミュレーションならではの世界。こういう世界に1年浸るっていうのは、本当に濃い付き合いになる。

 

そんな気心の知れた仲間たちは、次のシーズンから、みんな別の道を歩むことになる。後継同盟を作ろう、という声は多かったものの、幹部陣が全員辞退した。素敵な同盟だったから、このまま綺麗に終わろうよ、となった。とても不思議な解散だと思う。

 

嬉しいことに、同盟の解散が決まったあと、たくさんの勧誘の声をいただいた。かつての戦友だったり、戦場で何度も潰しあった好敵手だったり。たぶん、移籍すれば、また違った楽しさがあるんだろうなと思う。でも辞退した。1シーズンだけソロでのんびり余生を楽しみ、そのままフェードアウトするつもり。楽しかった同盟の行く末を少しだけ見届けたい。それまで余韻を楽しもうかなと。

 

今の気持ちは、クラスメイトみんなの進路がバラバラなのはわかっているけど、昨日まで学校があったからまだ実感がわかない、卒業式みたいな感じ。アホなことばかり書いていたチャットルームに、1人、また1人、思い出話とお別れの言葉を書き足していく。クラスの黒板を見ているみたい。1年一緒にゲームを遊んでいただけで、こんなにせつない気持ちになれる。

 

気に入ったネトゲは長く遊ぶほうなので、これまでも何年も遊んだゲームがいくつもある。当然ながら、遊んできたゲームの数だけ卒業してきた。楽しい時間はいつか必ず終わりがくる。サービス終了で終わったこともあるし、ギルドや同盟の解散がきっかけになったこともある。どんな形で離れたにせよ、どれも本当に楽しかった。ゲームを目一杯遊ぶために仕事もがんばった。幸せな思い出が、ずっとたくさん残っている。

 

思い出に残る、素敵なゲームと仲間に出会えて、本当によかった。

同盟員は誰も見ていない場所だけど、ちょっぴりおセンチな気持ちになったので、いつか思い出せるように書き残しておく。みんな、本当にありがとう。いつか、またどこかの戦場で。